令和6年度 第2回研修
第1部「SLAMの実演」
日時:2025年7月5日(土)13:00~16:00
場所:岡山県土地家屋調査士会館・駐車場、オンライン
第2部「ドローンデータ処理方法等の研修」
日時:2025年7月5日(土)16:00~18:00
場所:岡山県土地家屋調査士会館、オンライン
受講報告
報告者 倉敷支部 近藤雄介
青調会副会長の近藤です。
いつも青調会の活動に温かいご支援をいただき、誠にありがとうございます。
去る7月5日、開催した青調会の研修について、皆さまにもぜひ共有したく、簡単ではありますがご報告いたします。
今回の研修は、「SLAM(スラム):Simultaneous Localization and Mapping(同時自己位置推定および環境地図作成)」と「UAV(ドローン)解析」の2部構成。いずれも、現場作業を大きく変える可能性を秘めたテーマであり、実機に触れながら理解を深める貴重な機会となりました。
第1部前半では、福岡県の株式会社快適空間FCより大和氏を講師に迎え、ハンディ型3Dレーザースキャナー「RS10」の原理や特性、運用方法が紹介されました。RS10はSLAM技術を活用し、GNSSが取得できない上空視界不良の区域でも歩行するだけで点群データを収集できる機器です。精度も高く、短時間で広範囲の計測が可能で、現場での活用が進みつつあることが紹介されました。
ちなみに、気になるRS10本体の価格は398万円とのこと。これは、同等性能の国産ハンディタイプスキャナー(平均価格800万~1000万円)と比較して安価とされており、地上型レーザースキャナー(700万~2500万円)、UAVレーザー(ドローン搭載型、500万~600万円以上)などと比べても導入ハードルが下がる可能性があると感じました。
第1部後半では、株式会社ラージヴェルの大平氏より、点群から平面図を作成するためのソフトウェア「Anist(アニスト)」が紹介されました。特に注目されたのが、ボールド点群テクノロジーという独自機能です。点群を球体状に可視化することで視認性を高め、点群が存在しない部分についても一定の補完が行われることで、トレース作業の効率と精度の両立が期待されます。UAV写真測量による現況平面図作成との併用も、業務効率化につながる可能性があると感じました。
第2部では、当会の江田会員より、ドローンを用いた測量について、撮影から解析までの実際の工程が解説されました。MetaShapeを使った点群生成やオルソ画像の作成、RTKの有無による精度の違いなど、実務に即した技術的知見が共有されました。
特に興味深かったのは、ドローン機体の選定や登録制度についてです。調査業務で活用する機材としては、費用対効果の面からDJI Mavic Mini 3(約6.6万円)が手軽で十分な性能を持つと紹介されました。より大規模な測量や高精度が求められる現場には、RTK機能を搭載したDJI Mavic 3 Enterprise(約70万円~)が選択肢となるとのことです。また、100g未満のトイドローンは飛行許可が不要であり、10時間以上の飛行経験要件を満たすための操作練習にも活用できると説明がありました。
今回の研修を通じて改めて感じたのは、土地家屋調査士の業務とこれらの最新技術とをいかに調和させていくかということです。点群やオルソ画像の取得がより身近になるなかで、それらを地理情報として利活用する視点――すなわちGIS的な考え方が、今後さらに重要になるのではないかと感じました。現時点では、調査士の業務成果は依然として「平面図」が中心ではありますが、3次元データや空間情報をいかに業務に落とし込んでいくかは、今後の大きな課題といえるでしょう。
今回のような技術研修を通じて、新しい手法に触れ、現場への実装を模索することができたのは、大変有意義な経験でした。
ちなみに私は研修後、Amazonでトイドローンを購入し、娘と一緒に飛ばして遊ぶ日々を楽しんでいます。
GISがどうこう言っておきながら、価格やタイミングなど諸般の事情により、SLAMの即決導入には至りませんでしたが……。
いずれ近いうちに、土地家屋調査士によるSLAM導入のユースケースを共有する研修が実現できればと期待しています。
